本の言葉 ~私の読書ノート~

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『人生論』 トルストイ

      2016/02/22

人は永く生きれば生きるほど、快楽がますます少なくなってゆき、倦怠や、飽満や、労苦や、苦悩がますます多くなってゆくことを、いっそうはっきり知る。

たたかい合い、交代しつづけてゆく存在たちのこの全世界――それこそが本当の生命なのであり、残りつづけ、永久に生きつづけてゆくのである。

人間にとって最初に考えられる生命の唯一の目的は、彼個人の幸福であるが、個人にとっての幸福なぞありえない。

生存は緩慢な死である。

理性的な生命は存在する。それだけが存在するのである。人間の真の生命、すなわち、人が他のあらゆる生命についての概念を作りあげるもととなる生命は、理性の法則におのれの個我を従わせることによって得られる、幸福への志向にほかならない。

あらゆる存在が他人の幸福のために生き、おのれ自身よりも他の存在を愛する。

他者のために生きている人にとって、死は、幸福と生命の消滅と思えるはずがない。

ここに注目すべき現象がある。知性をあまり習練させたことのない、素朴な労働者たちは、ほとんどまったく個我の欲求に個執したりせず、むしろ個我の要求と対立する要求をいつも心のうちに感じているものだ。

人間の生存の不幸は、人がそれぞれ個我であることから生ずるのではなく、人が自己の個我の生存を生命や幸福と認めることから生ずる。

人は自分の死を知らないし、決して知ることはできない。

どの人の生命も半分は苦しみのうちに過ぎてゆくものであるが、その苦しみを人は堪えがたいものと認めず、気にしないばかりか、幸福とさえみなしている。なぜなら、それらの苦しみは迷いの結果として、また愛する人たちの苦しみを軽くする手段としてになわれるからである。

人間にとって苦しみはただ一つしかない。そしてそれは、人間にとってのただ一つの幸福の存する生命に、人間を否応なしに打ちこませる苦しみでもある。

人間の生命は幸福への志向である。








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